短編小説 小人との対話

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目次
1話: 探し物
2話: How to
3話: 悪口
4話: 同じ愛
5話: 浮き輪
6話: Deep loVe
7話: バブル
8話: 昇華
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あらすじ
ちょっと辛辣な小人さんが時々現れてはお話しをしてくれます。小人さんは軽くやさぐれた感じがなくもないけれど、不思議とみんな小人さんとのお話しによって変わっていきます。小人さんが、何か気づきをくれるようなこと、ちらっと耳にしましたよ。数年前から、小人さんと対話した方が8人いらっしゃるので、その分物語もあります。
ある人は大切な探し物をするために、ある人は生きることを、ある人は後悔を、ある人は...
本当に大切なものを、小人さんが教えてくれるのかもしれません。
そんな小人さんに、会いに来ていただけたら嬉しいです。1話のさわりだけ、お読みいただけます。
[1話:探し物]
仕事に出かけなきゃ
忙しい、とにかく忙しい
毎日思う
これじゃ、まるでミヒャエル=エンデのモモ
の中の...
中の...
なんだったっけ。
時間を盗んで行くやつら。
その状態だわ。
少し前まで、所謂デスクワークをしていたのに、突然何かがワーっとなって、そのワーはどんなワーなのかわからないのだけれど、とにかくワーっとなって、
「辞めます」
と退職届を出し、就業規則の中の規則に従って、ひと月後に退職した。
求人サイトの、「肉体労働系」でとにかく探しまくり、すぐに就職できたのはピッキングと呼ばれる仕事だった。
夜勤日勤拘らなかったので、スムーズに夜勤になった。
夜の8時には家を出て、その倉庫に向かわなければならない。
とある通販サイトの倉庫だ。
かなり大きく、セキュリティーもばっちりなわけで、おっちょこちょいの私には困ることが多い。
ドタバタと、身支度を整えたりしていると、
「おい」
え?おい?
私は独り暮らしだ。
テレビは点けていないし、幻聴?
それどころじゃない。
もう時間が、ない。
『おい、呼んでるんだ、返事をしろ』
幻聴ではないらしい。
その声のする場所を探した。
何故ならその声は小さく、聞き取り難かったからだ。
すると、テーブルの上に置いた、卓上鏡の端っこに、小さな小さな物体?何?人形?そんなのあった?
メガネがないとよくわからなかったので、メガネメガネと探し、かけてから見てみると、その物体は小人のような、いや、これまで小人を見たことはなかったけれど、多分、小さい人間みたいな形をしているので、小人と言っていいような...
ディズニーの何かに出てくるあの小人はまだ大きいな、と思うぐらいミニチュアだった。
そうだ、シルバニアという小さなおもちゃみたいなものを見たことがあったが、シルバニアよりも小さかった。
「ちょっとあんた、一体なんなの?人の家に勝手に入って!!どういうつもりなのよ!」
急いでいるし、不法侵入だよ!など思ったり、とにかく腹が立ってその小人に言った。