短編小説 おしえて
誰でもよかった。
とりあえず、誰でもいいから訊きたかった。
だから、まさに今すぐ傍を通り過ぎていこうとしている男性に声をかけた。
「すみません、私はどのように見えますか?」
あるひとりの女性が通りすがりの男性に訊ねたのは、「私はどうのように見えますか?」
「あなたは多分、三十を3つぐらい若いか、逆に進んでいるかぐらいではないでしょうか?そして、私から見たら、確実に女性。結婚指輪をしていないから、結婚はしていないのかもしれません。でも、指輪が嫌いなのかもしれませんね。服装から想像すると...カタいお仕事をされているようには感じられませんが、それも休日にラフな御姿でお散歩をしているだけかもしれませんし、何とも言えません。寧ろ、お仕事をされていないのかもしれませんしね。そして...」
せっかく、口を開いてくれたかと思ったら、『そして...』で止まってしまった。
止まった時間はどのぐらいなのだろう。
十分ぐらいだったか。
もしかしたら、三十分ぐらい経ったのかもしれない。
空を見上げたあと、
「穴があいているように見えます」
男性は答えた。
通りすがりの出会い。